医師と患者

様々な原因

チェックリスト

診断マニュアルの普及

かつては神経症のひとつに分類され、強迫神経症という名称で呼ばれていたのが強迫性障害です。それまで精神疾患は国ごとの基準を用いて原因別に診断が下されていたため同じ病気であっても判別がまちまちになってしまう現象が起こってしまっていたので、1980年にアメリカの精神医学会が発表したマニュアルで、症状別に病気を分離するという考えを取るようになりました。このマニュアルが登場する過程で、神経症のひとつとされていた強迫神経症が強迫性障害という名称に変更されたのです。この診断マニュアルはアメリカはもちろん、ドイツや日本など様々な国で採用され、国ごとに異なっていた診断基準が国を越えて容易に統一できるようになったのです。

心因性と器質性

国際的に診断基準が明確になったことでより合理的に診断できるようになった強迫性障害ですが、その原因は元来対人関係の問題や妊娠、出産や離別などの生活における大きな変化の中で見られる心理的、あるいは環境的なストレスが原因となると考えられてきました。しかし、長年の研究により、気分や感情をコントロールするセロトニンと呼ばれる神経伝達物質とする神経系の機能異常や、大脳基底核などの特定部位の障害など、脳内における器質性の原因も認められるようになってきているのです。強迫性障害の原因を考える際には、もともとあった器質性の原因が、なんらかの心因性のものが契機となって引き起こされているということも考慮しなければなりません。

性格特性の傾向

このように様々な原因によって発症する強迫性障害は、ある日突然その症状が見られることもありますが、これといったきっかけもなく、少しずつ発症していく場合も多く見られます。その場合、強迫性障害の患者に多く見られる特徴として、完璧主義や生真面目といった性格がある傾向があります。そのような考え方の癖が、強迫性障害を生み出すひとつの原因となっているのです。しかし、そういった性格が強迫性障害を発症させる引き金になるのかといえば、必ずしもそうであると言い切れない部分があります。完全主義であるが故に、例えばお札の向きをそろえて財布に入れないと気が済まない、テーブルに置くものの位置が少しでもズレていると気になって何度も直してしまうなどという行動が見受けられたりします。これが単なる性格であれば、その行動が自分にとって快適に暮らすためには欠かせない都合のいいものであるということになりますが、それが強迫性障害になると、非常に苦痛を伴うので疲労を感じてしまうことになります。その繰り返しやこだわりの行為が精神的に苦痛になっているかどうかが、強迫性障害であるかどうかを見極めるポイントのひとつであるといえるでしょう。

トラウマによる心の傷

強迫性障害の原因として、外的な要因による大きな精神的ショックや恐怖を感じた場合に心に傷が残ってしまういわゆるトラウマもそのひとつとして挙げることができます。トラウマとなった記憶を打ち消すために何度も同じことを繰り返す、そしてその行為を自分の意志で止めることができない強迫行為が出てきてしまうのです。同じようにトラウマが原因となる精神疾患には「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」と呼ばれるものがありますが、強迫性障害との類似点や相違点は重なりあう部分が多くありその判断はなかなか難しいので、トラウマによって過度な苦痛を感じ、日常生活に支障が出てくるようであれば、医療機関で診てもらうことをおすすめいたします。医療機関に行くことによって、原因追求も解決も、1人で悩むよりも早くなります。また場合によって別の病気が見つかることもあるので、早めの受診が必要となっています。